奈良吉野研修
(吉野町中央公民館大ホール)
6月1日(土)の午後から3日(月)に亘り、
私の地元、奈良県吉野町上市の吉野町中央公民館大ホールにて、
TTMクラブの研修会が開催されました。
今回の参加者は41名の大所帯。
東は茨城県から西は長崎県と、遠く14都道府県から奈良吉野の町に集まって頂きました。
今回のテーマのひとつは、
幻の畳技術と云われる「四つ割りふくまし付け」です。
これは、かつて畳は宮中(公家)だけの使用であったものが、
安土桃山時代頃から豪商など一部の平民が使用を許されたことにより、
それまで公家が使っていた畳の製作工法を思いっきり簡潔化して考案された畳の返し縫い(畳縁の側面を包む縫い方)の技術です。
現在の畳の造り方の基になるものです。
先ずは、藍染めされた幅1尺2寸(約36㎝)の麻布を四分割して切り裂き、
3寸(9㎝)ほどの麻布を畳の表面から裏面にまで届く時に緩まないように、
裾に思いっきり捻じった藁を入れて縫う方法です。
これは京都独自の技術で現在では、
その京都であっても殆ど技術を持つ方がおられないという超特殊技術です。
今回の研修会では、京都の中でも唯一の技術者でもあり、わがTTMのメンバーでもある、
表千家家元出入りの高室畳工業所の篠田社長の助言も頂きながら、
参加者全員が四つ割りふくまし付けに挑戦をしました。
麻布を畳包丁の先で切り裂く練習から、
強く捻じって藁を宛がうなど、
この技術は相当練習を繰り返さないと簡単に習得できるものではありませんが、
歴史的な背景や構造を紹介したことで、一度に全国の多くの畳職人が内容を理解されたと思われます。
その夜、桜の吉野山の太鼓判花夢花夢(カムカム)で宿を取って入浴、夕食の後、午後9時から恒例の「夜学」が始まりました。
今回の夜学テーマは「草座(そうざ)」です。
草座とは、紀元前インドの釈尊が菩提樹下の金剛座で悟りを開いた時に、
周囲の者が釈尊の身を案じ、
敷物の代わりに「吉祥草(きっしょうそう)」を並べたとの故実によるもので、
現在のかたちになったのは中国に仏教が伝わってから中国で考案されたものです。
我が日本では、寺院の特別な行事の中でも最高の僧侶が使用される座具(仏具)のひとつであるのです。
日本中の畳屋さんの殆どの方が存在すら知り得ないものですが、
日頃から寺社で僧侶の座具となる礼盤(らいばん)の原型となるものです。
これも歴史的な背景や、構造を学習し今後畳業界で製造される職人が増えることを期待します。
午後10時30分からは、明日の課題である寺院で使用されることの多い、
置き畳である厚畳(あつじょう)を有職本式で造るための事前説明と、
複数人数で製造するためチーム割での調整を行いました。深夜12時終了です。
2日目の研修会前の早朝、後醍醐天皇玉座の間がある重要文化財建築の吉水神社と、
金峯山寺蔵王堂の見学を終え、
昨日打ち合わせをした厚畳の製作が始まりました。
それぞれ4~5人の8チームが相談しながら作業を進めてくれました。
経験年数の多いメンバーが、若いメンバーと共に心地よい緊張を感じてくれたと思います。
この日の夕刻、殆ど仕上げた様子で宿に戻りました。
この日の夜学の時間は、学習と云うより今後のTTMクラブの進め方についてお願いをしました。
私の年齢的な問題などから、すでに経験値の高いメンバーが地元地域の指導者となるようにお願いをし、
技能を伸ばしたいと希望される職人の裾野を広げて頂きたいとお願いしました。
今後の業界の為に其のようにすべきと一同のご理解を頂きました。
3日目は、予定外の「鏡縁の付け方」を披露しました。
鏡縁とは複数の畳ござを、畳縁を付けながら幅を継いでいく昔からの工法です。
午前10時頃からの会場の片付け・掃除を30分で終了し、私の店に全員が来られ昼食をすませ、解散となりました。
今回のTTMクラブ研修会は、極めて特殊な伝統技術や、業界でも殆どの方が知らない畳の話など、超マニアックな畳の研修会となりました。参加者の皆さん、大変お疲れ様でした。
次回のTTMクラブの開催地は九州となります。
また、平行して各地域での勉強会も準備して頂けるものと期待しております。
初日に多忙のために帰宅された4人を除いた全員写真です。