愛知県豊川市研修
(豊川商工会議所会議室・豊川ビジネスホテル)
6月24日~26日、愛知県豊川市 豊川商工会議所会議室及び、豊川ビジネスホテルの会議室において、TTMクラブの研修会が開催されました。
2年前に横浜市で開催してからコロナウイルスの感染防止のために開催が出来ない状況でしたが、今回思い切って開催の運びとなり、久し振りもあって西は長崎、東は栃木からの総勢41名の大所帯の研修となりました。
今回の課題は、高麗四方縁の上敷き(拝敷き・軾)と、流備表に大和錦をつかって四方縁のものと、同じく二方縁で裏面の畳表を本継ぎで仕上げるものの3コースを選択して頂きました。初日は午後1時スタートでしたが、先ずそれぞれの工程についての詳細の説明をし、気持ちを高めて頂きました。
また今回、午後3時頃から、現在では日本中でこの豊川市に存在する会社のみの製造という「切り糸(手縫いをする際に使う糸)」の工場見学を行いました。
一昔前までは、手縫いをする時には「麻糸」を使っていましたが、50年前ごろから「ビニロン糸」が考案されています。現在では機械で畳を製造する部分も多いことから、この切り糸を使う畳屋さんも殆どいなくなりましたが、幸いTTMクラブのメンバーには、そのような方が多くとても嬉しい見学となりました。しかし、切り糸を使う我々畳職人と、その糸を製造するメーカーさんとの意見を交えることも過去に全くなかったようで、我々にはそれが不思議でなりませんでした。今後、職人が本当に使いやすい糸が使われるように、この製造者の方たちとも情報交換を続けていくべきと考えました。
宿泊のホテルにチェックインして、夕食と入浴を済ませ、午後8時半からTTMクラブ恒例の「夜学」のスタートです。TTMクラブでは、お昼の実技だけでなく、寝るまで缶詰状態の勉強会をしています。
初日の夜学の課題は「たたみの起源」。業界での常識では、日本一古い畳の現存は、私の住む奈良正倉院の「聖武天皇御床の畳(ごしょうのたたみ)」です。しかし、それ以前にも7世紀の法隆寺・法輪寺の龍鬢の筵(りゅうびんのむしろ)があります。またそれよりも500年も昔のものと思われる福岡県道場山遺跡の甕棺墓(かめかんぼ)のなかにも藺草(いぐさ)で織られた筵が発見されています。
約2000年前よりこの日本の地に藺草を機織りしたものが存在することについて周りの環境や歴史の流れなどを数年かけて深く調査をした結果、弥生時代に朝鮮半島を経由して渡来してきた多くの人の知識や技術がこの畳表の製造についての始まりではなかったかとの仮説をたて、その後の日本の国内の文化や生活の動きなどを紹介させて頂きました。事前に資料として私のレポートを読み上げ、今後はメンバー各自の調査を加えてこの調査に上書きをして、信憑性のある畳の歴史を探っていきたいとの話などをしました。正直、畳業界ではこの様な話題は全くの初めてと思うことから、参加者も感動されて勉強されているようでした。初日の夜学は夜中の12時頃、自由解散でした。
2日目には、朝一で豊川稲荷神社への御祈祷と、精進料理での朝食を頂き、9時30分から、実技の開始です。初体験の人でも完成度を上げてものづくりをするためには理論的な説明と理解が不可欠です。重要なポイントポイントを確実に説明し納得されての作業となります。多分他所では絶対に習ってもらえない内容であると自負しています。午後6時まで、休憩も無しで作業をされて、2日目の実技終了です。ホテルでの入浴と夕食を済ませました。
2日目の夜学は「過去に挑戦した変形した室内や広間等の採寸の仕方」です。過去に古典的な寸法の勉強もしましたが、現在ではレーザーという機械を利用しての採寸が日常です。それを踏まえての発想を変えての採寸方法です。
事前に準備していた経験談に加え、飛び入りで発表される参加者も数多くおられて、皆さんは大層現実的な良い勉強が出来ました。この日の夜額も12時終了、片付けをされて就寝です。
3日目は、終了の午前11時まで追い込みの仕上げ作業と、午前10時より、畳表がタバコなどで怪我をした場合に補修する「イ刺し」を紹介しました。所謂洋服などでみられる「かけつぎ」のことです。時間が充分に取れませんでしたので紹介だけで終わりましたが、参加者は帰宅されてから挑戦されることでしょう。
11時から1時間かけて、全員で会場を片付け清掃し、会場を移動し昼食を取って解散となりました。
今回は久しぶりのために人数が多かったこともありますが、若い20代の参加者が数名おられて、それは大変嬉しいことでした。私たちには今後への責任もありますがね。
次回のTTMクラブの会場は、四国高松市です。また、皆さんの勉強になるような企画をたてていきたいと思います。どうぞご参加宜しくお願いをして、報告とします。